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設立趣旨

 医学・医療技術のめざましい進歩に伴い、人類はこれまで想像もしなかったような場面について議論しなければならなくなりました。例えば、脳死と臓器移植、植物状態の患者、体外受精、出生前診断、遺伝子操作など、数え上げればきりがありません。
 一方、社会状況も急速に変貌し続けております。高齢者人口の増加と少子化、IT時代における医療情報の氾濫、医療経済の複雑化など、目まぐるしく変わる医療環境の中に国民は曝されています。医療の対象は、生活習慣病などの慢性疾患が大きなウエイトを占めるようになり、一方、国民の権利意識の高まりと自己決定権の主張もあって医療に対する社会的要請も大きく変化してきています。
 こうした状況のもとで、医療の質を高め、より良い医師患者関係を築くために、医師をはじめとして各種医療従事者は、さまざまな努力を行ってきています。
 私たちは長年にわたり良き医師育成をめざして、医育機関(大学医学部および地域中核病院)において医学教育に携わって参りました。国民に質の高い医療を提供するためには、良い医師の育成が大切であることは言うまでもないことですが、それだけでは良い医療は実現しません。
 最近、PUS( Public Understanding of Science:一般人の科学理解 )という概念が、現代科学論の領域で注目されています。これは科学の非専門家、(素人)である一般市民が科学知識を理解し、ひいては科学技術政策の意思決定に参加していく知的活動を意味しています。
 医学・医療の分野では、とくに専門家と非専門家(一般市民)との間の知識格差は大きく、これが医師患者間のコミュニケーションや医療行為の意思決定に影響を与えていることは否定できません。インフォームドコンセントがあらためて問われているのも、こうしたことが背景にあるからだと思います。
 そこで私たちはPublic Understanding of Medicine(PUM)という概念を導入して、医学・医療に関する正しい知識を一般市民に情報として提供し、理解してもらうことが大切であると考えました。
 現在、わが国の医療に関するさまざまな問題、例えば、高騰する医療費、医療保険制度と混合診療、健康補助食品の功罪、要介護高齢者のケア、などの問題は、専門家だけに任せるので無く、国民一人一人が当事者として理解することが大切なのです。こうした医療の現状、それを生み出した仕組みを国民に正しく知ってもらうための広報活動が必要であると思います。医師と国民が同じサイドに立って、一緒に医療を見つめることが、日本の医療を良くするために大切なことであります。
 これまでの医療は、確かに医師のパターナリズムと患者のおまかせ主義で成り立っていた部分が少なくなかったことは否めませんでした。「疾患中心・医師主導型」の医療から「相互理解・共同作業型」の医療へと転換が図られつつあります。医療の原点は、「はじめに患者ありき」であります。
 ここにPUMの開発、普及という観点に立って、正しい医療情報を提供し、あわせて健康教育と患者教育を促進するために「医療教育情報センター」を設立し、わが国の医療と福祉の向上に寄与していきたいと考えるのであります。