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医療教育情報センター
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No92
![]() さきにこの医療ニュース(68 2006/12/25)でも報告したように、慢性疲労症候群(CFS)の新しい診断指針改定の作業が行われていたが、このほど完成し発表された。(詳細は日本疲労学会誌 2008年2月号掲載予定) 原因不明の慢性疲労を訴える患者は極めて多いが、「だるい、疲れやすい」からといってすべてCFSではないので、CFSをどう診断するか臨床の現場では難しかった。これまでのCFS診断基準は確かにその点曖昧であったことは否めなかった。そこで今回の改訂になったわけであるが、今回は病因と考えられる感染症、免疫異常、内分泌・代謝・神経系異常の各分野から専門家が集まり、血液検査異常や画像検査異常も含めて診断に有効と思われる点について検討が行われた。その結果、次のような結論が得られ新しい診断の指針が作成された。 (1) 現在世界で広く用いられている米国CDCのCFS診断基準(1994年)を基盤としてわが国に合った独自のものを作成した。 (2) これまで国の内外で発表されているCFSの臨床症状の出現頻度をもう一度洗い直し、出現頻度の高い症状をCFS診断のための重要なエビデンスとした。 (3) これまでに免疫異常や内分泌・代謝異常、さらに画像検査異常などのデータはあるが、いずれもCFSに特異的といえず現時点ではCFS診断基準に導入することはできなかった。 (4) 慢性疲労を来たす器質的疾患を徹底的に除外するため、除外すべき疾患およびそのための臨床検査項目を明確にした。 (5) 慢性疲労を訴える患者に対する診断のプロセスを明示した。そのため今回の改訂により「診断基準」とせず、「診断指針」、つまりCFS診断への手引きとした。 (6) CFS診断へのステップとして「前提」を設定し、前提Tでは疲労を来たす器質的疾患を除外する。前提Uは疲労の状態に関する4条件を提示し、これをすべて満たし、前提Vでは自覚症状と身体的所見10項目のうち5項目以上を満たしたとき、臨床的にCFSと診断するとした。 (7) 旧診断基準にあった「CFS疑診例」を廃止し、「特発性慢性疲労、ICF」を設けた。 (8) これまで線維筋痛症や身体表現性障害との鑑別が問題であったが、新しい診断指針ではこれらはCFSの併存疾患として対応することとした。 新しい診断指針によって、これまで曖昧といわれていたCFSが的確に診断されることが期待される。(NH)
(No092;2008/02/12)
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