No19
患者様か、患者さんか? 患者さんは病院にとって顧客なのか?
最近の日本医師会雑誌(第131巻・第6号/平成16年3月15日)に、医療
政策シンポジウム『わが国における医療のあるべき姿ー医療の質と安全を確保するた
めにー』での内容が載っている。シンポジウムの基調講演を担当された福原俊一氏
(京都大学大学院教授・医療疫学分野)はその講演の中で、日本の殆どの医科大学が
堰を切ったように新しい教育概念を一斉に導入しているが、このような表面的な対応で
よいのだろうか、と指摘している。海外から輸入した医学教育方法が画一的に全国に
普及している状況は、日本の医科大学の教育学的な創造力不足を如実に表しているの
ではないか。
医療事故が起こり、それがマスコミに取り上げられると、病院長などが頭を下
げながら、異口同音に『患者様にご迷惑をかけて....』と謝罪している画面を見
ると、うわべの言葉と内面的な本質との間に大きな隔絶があるのではないか、と感じ
てしまう。また、病院へ行くと『患者様の....様』との呼び出しを聞く事があ
る。
筆者は病院で患者様といわれると、なにやら背中が寒くなり、この病院は本音では
患者さんにお金を持って来いと言っているようにさえ感じてしまう。筆者がひねくれ
ているためであろうか。福原先生はその講演の中で「患者を患者様と言うようなア
プローチ、『患者満足度ランキング』といった浅薄な顧客迎合主義がもてはやされて
いるが、これでよいのか。」と述べておられるが、筆者にとってわが意を得たりの思
いである。
医療機関は金銭的営利を目的としているのではない。教育機関も同様である。
学生・生徒は教育機関にとってお金を頂くお得意さんなのか。医療機関、教育機関、
宗教法人などは不特定多数の人々の利益(健康、将来の幸福あるいは心の悩みからの
脱却)のために存在するのであって、株主の金銭的利益を目的とする株式会社とはそ
の目的が根本的に異なることを医療関係者も、そして一般国民も認識すべきではない
か。医師・患者関係は温かい心の繋がりが基本になければならない。御医者様/患
者様関係では、何やら薄ら寒く、信頼関係にはほど遠い。志とか、使命感とか、
博愛といった精神的基盤が崩れつつあるわが国の一部分現象なのかも知れないが、心
の教育をあらゆる分野(家庭、学校、学校外の環境など)で醸成せねばならない。(IS)
(No019;2004/04/16)
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